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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
お由羅は、黙ったままであった。
(斉興が、隠居をすれば、妾は、四国町へ下げられるかも知れぬ――下げられるだけならよいが、あの軽輩共は、殺しに来るかもしれぬ)
お由羅にとって、斉興を隠居せしめて、斉彬を立てようとする幕府の圧迫が、こんなに強く来ようとは、考えられぬことであった。
(斉彬を、殺す外にない――)
二人とも、そう考えはしたが、斉彬を殺すということは、同時に、自分らも、久光も、殺されて、島津の家が滅亡することであった。斉彬を殺したなら、軽輩の人々が、何をするか――その人々の気持は、十分、二人に判っていた。
(牧に命じて、呪殺を――だが、牧は、いつかの日、斉彬のような、心の強い方は、効き目がないと申していたが――それでも、牧の外に――)
と、思うと
「牧は、何処に居りましょうかの」
「さあ――」
将曹は、矢張り、腕を組み、首を傾けたままであった。
「捜して――」
「事ここに致っては、大殿に、飽くまで、隠居することを、拒絶して頂くの外に、ござりますまい。お方」
将曹は、腕を解いて、じっと、お由羅の顔を見た。
「お上も、近頃は、すっかり、気が、弱くおなりなされてのう」