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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「はっ」

「誰を、呪咀した?」

牧は、はじめて眼を上げた。澄んだ、聡明な、決心と、正しさと、力と、光との溢れた眼であった。

「御幼君、寛之助様で、ござります」

牧のそういった言葉には、少しの暗さも、少しのやましさも無いのみか、自信と、力とさえ入っていた。玄白斎は、自分の想像していたように、斉彬を呪っているのではなかったので、軽く、失望したが

「御幼君をな」

と、いって、すぐ

「前の、お姫、お二人は?」

「存じませぬ」

「しかと」

「天地に誓文して」

「御幼君のこと――誰が、申しつけたぞ」

「そのことは、兵道家として――よし、師弟の間柄とは雖も、明かすことは――」

「よし、わかった。その言はよい。然らば、聞くが、御幼君と雖も、主は主でないか。そもそも、兵道の極秘は、義の大小によって行うものではない。斉彬公が、又、御幼君が、よし、御当家のため邪魔であるにしても、これを除けよと命ぜられたる時には、兵道家はただ一つ――採るべき道はただ一つ、一死を以て、これを諫め、容れられずんば、腹を裂く。義の大小ではない。仮令、いかなることたりとも、不義に与せぬを以て、吾等の道と心得ておる。