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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

(斉彬公のお世嗣が、絶える)

と、いう絶望的な考えが、狂乱的な、苛立たしさと一緒になって、回転していた。

(何んとなく、お疲れになったような顔、死ぬかも知れぬと仰しゃった言葉――もし、それが、本当になった日に、哲丸様が、又呪いの手で、お亡くなりになったとしたなら、斉彬公の御血統は、何うなるか?)

名越は、すくすくと、大きくなって来た自分の子が、何うしてか、憎いように、感じた。

(不忠者、貴様、哲丸様の、お身代りになれっ)

と、叫びたいような――自分の命を、子の命を犠牲にしても、哲丸の命だけは、引きとめたいと感じた。そして、今までに、決して、病に罹ったが最後、平癒したことのない例を思うと、拳を顫わしてみても、歯噛みしてみても――

(絶望だ)

と、いう感じが、頭中に、身体中に感じられて、自分の身体を抛げつけ、引き裂き、踏み躙って、哲丸を殺す、何かの、魔の力、魔の神の前へ、叩きつけたいように、感じた。

半狂乱の眼、喘ぐ呼吸、顫える拳――手早く、袴をつけ、肩衣をつけると

「お刀」

と、追いかける声に返事もしないで、走り出した。

(医者は、何をしているのか)

左源太は、医者を叩き斬ってやるぞ、と思った。