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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
打伏してしまった。
「何を泣く」
斉彬が、呟いた。人々が、久光を、のぞき込んだ。久光は、洩れる声を、歯で、袖でつつみながら――それでも、溢れて来る悲しさと、憤りを、何うすることも出来ないで、むせていた。
「久光」
久光は、伏している袖の中から
「はい」
と、答えた。人々は、何故久光が、泣いたのか判らなかった。それから、斉彬の病気の重いことは、十分感じていたが
(今、死ぬなど――)
と――だから、久光の、嗚咽に対し反感さえ感じながら
(何を泣く?)
と、思った。斉彬が、動かぬ頭を、久光の方へ向けて
「お前に、それが、合点行かぬか――」
と、低く云って、久光を、眼の隅から見ようとした。久光は、少し、頭を上げて、だが、両手をついたまま、首垂れていた。
「わしは、自分を、子供を、天下のために、家のために、犠牲にしてきた。それは――ただ、島津が一致して、天下のために、快く、働けるようになってくれたならよいという、ただそれだけの望みからであった。今――哲丸が立てば、わしの亡き後、必ず、哲丸を守る者と、それに反対する者とが、相争うであろう。それをさせたくない。それが起れば、島津は、有為の士を悉く失い、天下は、何うなるか、判らぬようになる――」