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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「爺、草鞋の新しいのを――」

二人は、刀を提げて上り口へ出た。そして、草鞋の紐を通している時、二三人の馬上の人々が、二人の眼を掠めて、鉄蹄の響きを残して、山の上へ影の如く過ぎ去った。

右手は、雑草と、熊笹の茂りが、下の谷川までつづいていた。左手は、杉の若木が、幾重にも山をなして、聳えていた。

斉彬に目をかけられている家中の軽輩、下級武士の中の過激な青年達が、牧を襲撃するという噂が、いつの間にか相当に拡がっていた。後方を振向いた一人が

「あれは?」

振向くと、山角の曲りに、白い鉢巻をした人々が、走り出て来ていた。

「山内、斎木、安堂寺、貴島」

と、馬上から、飽津が叫んだ。

四人が、振向いて

「何?」

と、いうよりも先に、彼等の眼は、その近づいて来る人々を見た。山内は、大きい舌を出して、脣をなめながら

「来よった」

と、笑いながら、袖の中から、襷を出した。

「駕、急げっ、先へ行け」

と、二三人が、同じことをいった。駕は小走りに遠ざかった。斎木は、道幅を計って

「山内と、二人でよろしい」

追手は、木の間へ一寸隠れて、すぐ又現れた。もう間は小半町しかなかった。山内と、斎木が第一列に、少し下って貴島と、北郷が、第三段に安堂寺と、飽津とが、並んだ。