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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁
丈八の報告を、兵部は、横見しながら聞いているのであった。返辞も独り語のように、
『――ふム、そうか、行届いておる』
敵を称揚するような呟きである。兵部には、内蔵助の気もちが、こうして居ても実にわかる気がする。まだ会ったこともない人物であるが、大藩と小藩の差こそあれ、彼も一番の重臣として社稷を護る人間であったし、自分は、上杉家の存亡を負って、社稷の為めに粉骨しなければならない老臣の立場にあるのだ。もし地を更えて、自分が内蔵助の場合に立つならば何う動くか――何う処すか――それを思えば、自から内蔵助の行動と意中は、鏡にかけて映し取るように、彼には読めてくるのだった。
『――御家老』
丈八は、短い体を、縁先から伸ばした。
『至急、上方のほうへ、七八名ほど遣って置きたいと思いますが』
『何か、事でも起ったか』
『いや、内蔵助在府中は、べつだんの事もございませぬが、近く、山科へ帰る気振が見えます。――で、彼等の一行よりは、先を越してやって置いた方が眼立たぬように考えられますが』
『すでに、五名は、山科へ参っておる。そう多勢も如何なものか』
『では、本所のお邸の方から、同僚共を五名ほど選り抜いて連れて参りましょうか』