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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

『浮様』

『お大尽さま』

『お気持でもおわるいのでございますか』

『そんな事では、撞木町へ上っても、すぐ酔いつぶれてしまいましょうに』

竹之丞は、自分の膝へ、内蔵助の頭をのせて、

『お水は……』

『イヤ、酒、酒』

『もう、お毒でございまする』

『酒が毒とは、誰がいうた、百薬の長とは誰かが云うたが、毒と歌うた詩人はない。――長生きして、金蓄めて、この世を長く生きるのも一つの考え。又、為たいことして、美しい女性に囲まれて、美酒の酔いにこの世を過すも又一処世。どうせ、生きている間が現世……後世は空』

『さ……それでは、お起きなされませ。ほかの乗合のお客たちが、迷惑でございます』

『な……なる程……この船には、まだ、よその客衆が居たはずじゃったな。……これは、失礼』

と、しどけなく、膝を横坐りに起き直って、

『――伏見はまだか』

『まだでござんす』

『さてさて、待ち遠い。水の上では、舞いも歌いもならぬじゃないか。伏見よ、早く近うなれ』

『何を仰しゃります』

『ゆるせ。旅の間が、この久右衛門の実は極楽、山科の家へ帰れば、女房子の気鬱い顔、借金取のうるさい訪れ、やれ何だのかだのと、伸々と、骨伸ばしもならぬのじゃ』