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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁
『…………』
楚々と、長廊下をすべって行く姿――。女ごころは女が知る。後に従いてゆく侍女たちは、奥方の肩がこの数日の間に、薙刀のように薄く見えて来たのに気がついて、
(おいとしい)
と、思いやりを噛みしめて泣いた。
内匠頭は、沈痛な足もとを、
『大儀』と、確乎り踏みながら出迎えに云った。
夫人の見上げる眼に、ちらと、無言な眼を酬いただけで、すぐ表の大書院へ入ってしまった。
晃々と、燭りと家臣をそこに集めて、すぐ翌日の手筈や協議であった。家臣たちの顔もみな硬ばっている。誰も、深夜の内匠頭の青白い顔や、食事の量にまでは、気がつかないであろう。
夫人は、そっと、奥から使をやって訊かせた。
『お湯浴みは。お食事は』――と。
内匠頭は、一言、
『いらん』
首を振って、
『十五日は、両使、増上寺へ御参詣の日であるぞ。諸事、準備はよろしいか。明十三日、高家の下検分があろう。手ぬかりするなよ』
『お案じなされますな。今夕までに、壁、障子、襖、天井洗いその他、終りました』
安井彦右衛門が、答えると、誰かが、
『畳は』
と、云った。
彦右衛門は、じろっと、声の方を見て、
『畳更えは為たものか、せぬものか、念の為、その段も、吉良殿へ出向いて、お伺いいたした所、例年一月にはお取替えあるに依って、それ迄には及ばぬというお指図でござりました故、差し置き