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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

『まあ、手ばなしな』

『離しゃるな、ころぶぞよ』

笹屋の大暖簾までひょろひょろと、女の肩にすがって出て来た。

『あれ――お駕籠へ』

『駕籠。はて、わしゃ駕籠ぎらい……』

と、内蔵助は、もう、夕方のほの明るい外へ歩みだしている。亭主を初め、大勢の声がその背へ世辞を送った。――送る方も、送り出された方も、何か、こうほっとした気持だった。

もう、踊りの輪が、初まっている。――助右衛門へ、踊らぬかと、声をかける者がある。内蔵助は、犬に吠えられている。助右が、石をひろう。

小野寺十内は、時々、内蔵助のそばへ寄り添って、何か囁いた。聞かぬ顔しながら、内蔵助はうなずいた。そして小声に、

『後』

と、云った。

振り向くと、辻咄の徳西が、羽織を頭から被って、尾いてくる。――助右衛門と十内は、眼くばせを交し、駕籠をよんで、内蔵助をのせた。そして、駕籠のうちへ、

『では、明日』

と云って、べつな道へ別れた。

駕籠へ入ると、とたんに、内蔵助は正体のない様子に見えた。加茂川尻を、ひたひた揺られてゆく――後からついてくる徳西の足も早くなっていた。いつのまにか、その影は二つになり、三つになり、四名にまで数を増している。