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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

そしてすぐ、再び、松坂町へ戻って、上野介の帰りを見張っていた。――附近の空地、飲食店、寺の門の陰などには、なお、すわという時の聯絡をとるために、蜘蛛の巣のような注視を張って――

だが、到頭、夜になっても、上野介の乗物は、そこへ帰って来なかった。

刻々と来る報告を聞いて、内蔵助は、いつもの炬燵から出なかった。

血気な連中は、もうしびれを切らしてしまったらしい。一人寄り、二人寄り、いつのまにか、内蔵助の炬燵のまわりは犇めく人々で埋まって、

『大夫、やりましょう』

『明朝の朝会とあれば、きっと、深夜になっても、上野介は立ち帰るに相違ありません』

『この機を外しては』

と、今夜の決行を迫るのだった。

煮えきらない炬燵思案の顔いろを見ると、中には憤然と、畳を蹴って起ちかける者もあり、

『まあ、待て』

と、友に云われて、不機嫌に坐り直してはいるが、何かもう、噴出すべき力が――やむにやまれないこれだけの人間の意志が――地殻を破るように熱しきっている空気だった。

それを抑えつけている気まずさ、内蔵助をのぞく他は、誰の眉も、焦々していた。

――と、そこへ堀部安兵衛が、

『だめだ』