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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新編忠臣蔵(しんぺんちゅうしんぐら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 337,181 字 · 676 頁

青空文庫

『何で、後によい事か。上杉家の面目が何処に立つ。弾正大弼の不孝の名は、末代までの笑いぐさ、それで、武門が立つか』

『わらいましょう、世間は笑うにちがいない。けれど、笑わせておく所にも武門の大義がござります』

『うるさい。――ああ暇どるっ、放せっ、馬を曳けっ』

『聞き分けのない!』

と、兵部は、子を叱るように、声をしぼって、

『あなた様は、大藩米沢の御主君であるという事をお忘れか。御実家の危急が大事か、米沢一藩の運命が大事か。――又、上野介様おひとりの死が重くて、上杉家一藩の者の生命がなお重いものとはお考えがつきませぬか』

平常の臣下の声ではなかった。

その語気の厳しさに、弾正大弼は思わず足が竦んだ。

『お坐りなされ』

兵部は、儼然と云って、胸を真っ直ぐにした。

『あなた様のお気持は、決して無理ではない、御尤もです。兵部は腸が掻きむしらるる程、御推察いたしまする。親子の情愛、そうなくてはならないところです。――が、抑も、君主たる者は、身を以て常に民の心となり、一身を以て常に臣下の心となっていなければならないものです。それが、王道でござる。私心、自我、小義にうごかされる事は、たとえそれが正しいことでも、君主として許されぬところです。