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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
犬鳴山では毎日滝にうたれて荒行をした。荒行をはじめた始めの一週間には種種な不思議なことがあった。
八月の六日になって、河野は大和の葛城山へ登ってその頂上で修練を始めた。草の上に安坐趺跏して、己の精神を幽玄微妙の境に遊ばしている白衣を着た河野の姿は夜になってもうごかなかった。空には星が光っていた。鹿の鳴く声がすぐ傍から聞えて来た。鹿の声は二三匹の鳴く声であった。鳴き声が止まるとがさがさと云う落葉を踏む跫音が聞えた。そして河野が気のついた時には五匹ばかりの鹿が傍へ来て立っていた。鹿は馴れ馴れしそうに寝たり起きたりした。
河野は行い澄して動かなかった。七日の明け方になったところで、今まで傍にいた鹿はどこへ往くともなしに急にいなくなってしまった。河野はそのまま行を続けてその日の夕方になったが、水が喫みたくなったので渓へおりようと思っておりかけた。二三丁ばかり往ったところで、前方から不思議な風体をした男がやって来た。黒い紋のある衣服を着、袴を穿いた二十二三に見える色の白い眼の鋭い男が髪を紐で結んで後へ垂らし、二尺くらいある短い刀を一本差していた。
「その方は、こうした深山の中で独り何をしておらるる」