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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
刀を差している男は声をかけた。
「私は昨日からこの山へ登って、修業を始めた者でございますが、水が欲しいので尋ねて往くところでございます」
河野がありのままに答えると、
「水なら、わしが知っておるから教えてあげよう」
刀を差した男はこう云って引返して山をおりかけたので河野もその後から跟いて往った。栂や白樺などがいじけた枝を張ってぼつぼつ生えている間を通って、山のうねになったところを廻ると、大きな岩の聳えている下へ出た。そこには苔の生えた清水の溜っている岩穴があった。
「これだ」
刀を差した男はそれに指をさした。河野は腰にさしていた竹筒へその水を汲んだ。
うっすらと峰を染めていた夕陽の光が消えてしまった。二人は今おりて来た道を登った。
「昨夜、山の上で徹夜した時に、何か変ったことはなかったか」
刀を差した男が云いだした。
「べつに変ったことはありませんが、夜遅くなって、五六匹の鹿が傍へやって来て、明け方まで遊んでおりまして、明け方にどこへか往ってしまいました」
河野が返事をすると、刀を差した男は揮り返ってにっと笑った。
「その鹿は五匹じゃ、二匹は親鹿で、三匹は子鹿じゃ」