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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
水の澄みきった小さな流れがあって、それがうねうねと草の間をうねっていたが、それにはかちわたりの石を置いてあった。少女はその石の上を福草履のような草履で踏んで往った。広巳はうっとりとなって少女に跟いて往った。そこには丁子の花のような匂がそこはかとしていた。少女の声が耳元でした。
「さあ、どうぞ」
建物の前には黒い虎の蹲まっているような脱沓石があった。広巳は室の中を見た。室の中には二十七八に見える面長の色のくっきり白い女が、侵されぬ気品を見せて坐っていた。
(おや)
広巳は胸のときめきをおぼえた。海晏寺の前の榎の傍で擦れちがい、八幡祠の諍闘の際に見た女にそっくりであった。女は広巳と眼をあわすなり莞とした。
「さあ、どうぞ」
「は」
はと云ったものの女の気品に押されて立ち縮んでしまった。
「他には何人もいないのよ、ささ、どうぞ」
「は」
「ほんとに何人もいないから、遠慮はいりません」少女の方を見て、「お客さんは、はにかんでいらっしゃるから、汝だちがあげておやりよ」
女は莞とした。それは己の姨さんのような温みのある詞であった。少女の微笑が聞えた。
「さあ、どうぞ」
「おあがりなさいましよ」