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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁

青空文庫

山道に馬をかけることはなれている、ただ松の火を消さぬように、背へかこいながら、疾風のようにかけて行った。

――ああありがたい、神さま!

まにあった。

屏風岩へかかる五百米ほどてまえで、遂に進軍中の官軍に追いついたのである。――お糸はもえている松を高くあげて、

「危い! 危い! とまって下さい」と叫んだ。叫びながらも、はやさはゆるめなかった。――兵たちはびっくりした。

「よけろ※(感嘆符二つ、1-8-75) 馬だ!」

「馬だ! あぶない※(感嘆符二つ、1-8-75)」

叫びながら左右へひらく、そのあいだをお糸はとぶたまのようにつきすすんで行った。

――自分は密偵としてつかまったのだ、いま屏風岩のことを話しても誰も信じてはくれないだろう、方法はひとつしかない! そう覚悟していたのだ。

五百人の隊列をつきぬけたとき、

「――天子様、万歳」

とお糸が叫んだ。――そしてまっすぐに屏風岩の下まで乗りつけると、もえている松を岩の根方へ力まかせに投げつけた。

恐しい火焔が闇をつんざいた。轟然! 轟然! 轟然※(感嘆符二つ、1-8-75)

道をはさんで左右に迫る、三十米あまりの岩石は火柱とともにすさまじく、くずれ出した、まさに地軸がさけたかと思われた。