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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁

青空文庫

五

声をはげまして伝九郎はたった。

五

いや五人のおどろいたこと、あの時はてっきり臆病者と思ったればこそ、満座の中ではずかしめたのであるが、戦場の働きをみると臆病どころか、こんどの戦いずい一の功名をあげた勇士であった。

「いえ、その、て、手前どもはけっして」

「じつにその、それはめいわく、どうぞおゆるし」

とあおくなってしりごみをするのを、まわりの者が、よってたかって、まるで追い立てるように大庭へおしだした。――伝九郎はすばやく身仕度すると、愛剣の鞘をはらって進みよる。

「さあまいられい、意趣はそちらにおぼえがござろう。伝九郎は一人、貴殿方は五名――えんりょなく一時におかかりなさい、いざ!」

「それがその、あれで……」

「ぬかぬかーッ」

大喝一声、がんと耳へたたきこまれて、五名はわれしらず抜刀した。とたんにやぶれかぶれの暴勇、むちゅうでぬいた刀をふりかぶって、

「もうこれまでだ、やっつけろ」

と一時に斬ってかかる、刹那!

「えらいぞ!」

と一足開く伝九郎、「その意気でこい、いまこそたっぷり返礼してやる、ゆくぞ」

さけぶとともにきらりひらめく剣、伝九郎の体がつばめのごとく跳躍したと思うと、二度、三度――五度、光のように剣光が空を切る。