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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁

青空文庫

四

「ほう、きさままた妙に肩を持つな、甲子雄から割でもとってるのか」

「冗談じゃあねえ、わっちがまえから鍔道楽なのは先生も御存じでしょう、その点でわっちゃあ松林さんの気性を見抜いているんだ。亡くなった大先生も鍔にゃあ眼が明るかったが、松林さんとくるとわっちに輪をかけたような鍔狂人だからね、鍔道楽するくれえの人間に悪いやつはねえ」

四

「ああ、その鍔で思い出した」

お天気安は手を拍って、

「いま思い出しても惜しくってならねえのは、ねえ先生、わっちがこの道楽にはいって一世一代てえ掘出し物をしたんで」

「と思ったら偽だというやつか」

「ところが、南蛮鉄で龍の透し彫、眼に金の象眼が入っている、耳のところにちょいとした疵はあるが、なんともいえねえ品で、わっちゃあ越前の古鍔と睨んだから、すぐ蜆河岸の道場へ持っていったんでさ」

「そんな詰らねえ話はよしにしな」

「まあ聞いとくんねえ、先生もひと眼ご覧なさるなり、安――こいつは掘り出したぞ。越前の甚左衛門に相違ない、わしが十両で買おうとこうおっしゃるんで、その時お金をいただけばよかったんだが、こっちも欲があるからね、いちど松林さんに御覧を願いてえと思って訊くと、正月祝いに奥の植半へ、門人衆をそっくりつれて呑明しにいらしったてえことで、――じゃあ明朝お帰りになったら御覧にいれてください。