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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁
二の三
「では新庄まで立ちもどり、証拠となるべきものを持参仕る、そのあいだかの品は相違なくお預かり願いますぞ」
「わたくしは伝堂の娘でございます」
「――――」
じっとおゆきの眼をみつめながら、渡部金蔵は大きくうなずいて踵をかえした。
つれの者をうながして四人は去った、久右衛門はさっきから黙って始終を見ていたが。――四人の者が手負を馬に乗せ、新庄のほうへ去って行くのを見すますと、静かに娘の肩へ手をかけていった。
「おゆき、おまえは何歳になる?」
「まあ――何をおっしゃいますの。十五だということは御存じのくせに」
「立派だったぞ」
久右衛門の眼に光るものがあった。
「何もいわぬ、……立派だったぞ」
「父さま!」
おゆきは槍をおいてひしと久右衛門の胸へすがりついた。――張りつめていたればこそ、大人も及ばぬつよさを見せたけれど、その張がゆるめばやっぱり十五の少女である。喜びとも悲しみともつかぬ涙でぬれた頬を、おゆきは赤子のように父の胸へすりつけていた。
二の三
家の中へ入ると、久右衛門は改めて、
「だがおゆき、おまえ御家中の士にあれほどさからったのは、ただ約束を守るというだけなのか、ほかに何か考えがあってしたことなのか」