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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁
「三樹の祝いは端午、今夜はおまえのお相伴だ、遠慮をすることはない、さあ」
「では――」
加代は羞いながら土器を手にした。
端午といったが、明けるを待たで死ぬ二人である。貧乏のなかにも、兄に頼りきっている加代が、何も知らずに、軽く噎せながら白酒を啜る姿……可哀そうに、思わず胸へ熱いものがつきあげてきた。
「まあ、お兄さま!」
加代は、兄の悲しげな顔つきを認めて、どうしたのかと不審そうに、
「今日はどうか遊ばしたのではございませんの? 何だかとてもお悲しそうに見えますけれど」
「そんな馬鹿なことがあるか」
三樹八郎は慌てて打消したが。――しかし、何も知らせずに死なすより、いっそすべてを話して武士の娘らしく自害させるほうが本当ではあるまいか、とも考えたので、
「じつは加代、おまえに話がある」
「――はい」
「今宵の祝いはな……」
云いかけた時だった、間近の戸外に当って、突然はげしい人の跫音と、
「えいッ」
「えいッ」
引千切るような、切迫した掛声が聞え、かっかっと剣の触合う音さえする。――三樹八郎は手を伸ばして大剣をひっ掴むと、
「加代、燈を見せろ」
そういって立った。
そこは浅草天王閻魔の裏手に当り、浪宅は空地端れの竹藪の中にある、――雨戸を開けて出た三樹八郎、うしろから加代が差出す燈明に透して見ると、藪の前のところで七、八名