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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁

青空文庫

「えいッ」

逆胴を強か斬放す。がらがらッ、燭台と膳部を踏砕きながら、悲鳴とともに顛倒するのを見て、

「やったッ」

「狼藉者、斬ってしまえ」

「逃がすなッ」

わっと一座は総立ちになった。――荒道場と名うての面々、酒の勢いもある、二、三本の白刃がだっと一時に殺到する。

「心得た、それッ」

三樹八郎は右へ、大きく跳躍したが、とたんに足を返して、

「やッ、えいッ」

一閃、また一閃。

「む――」

「がっ」

真向と脾腹を存分に斬られて、二人の躰が毬のように飛ぶ、と見た次の刹那には、三樹八郎の躰は左手の一団のまっただ中へ、

「え――ッ、とう※(感嘆符二つ、1-8-75)」

と斬込んでいた。

湛左衛門は総身の震う激怒に襲われていた。立向っていく門人が、まるで草を薙ぐようにばたばた斬伏せられる、しかもみな一刀、急所を外さずずばッ、ずばッ、とやられるのだ、その殺気の凄じさと、太刀捌きの正確さ、――自分もできるだけに、湛左衛門は無上の辱めを受ける気持だった。

「みな退け、みな手を退けッ」

喚いて立った湛左、三尺一寸無反という、まるで天秤棒のような強刀を抜いて、

「そいつはおれが料理ってやる、人を斬るのはこうするのだ、見ておけ」