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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《春いくたび(はるいくたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 70,094 字 · 142 頁

青空文庫

「甲子雄、きさまそんなにおれが嫌いか」

「何をいう、貴公と拙者の仲で、今さらそんな穿鑿をする必要はあるまい」

「そうか」兵馬はにやっと笑って、

「おれはまた、ここへおいてくれというたびに、きさまが慌てて金を貸すからおれが側におるとそんなに迷惑なのかと思ったよ、ははははは、落魄れると人間も僻みが出るて」

「そんな馬鹿なことがあるものか、では二十両でいいのだな」

「うんけっこうだ、あとはまた――」云いかけて、何をみつけたか、急に兵馬はむっくりと起き直った。――立とうとしていた甲子雄が、

「どうした」

「いや、なに……」と苦笑しながら、

「貴公の差しているその脇差、ばかに凝った拵えだと思って、さっきから感心して見ていたのだ、――ちょいと見せてくれ」

「ああ、どうぞ」甲子雄が脱って渡すのを、受取った兵馬、眼を据えて柄頭からずっと拵えを見ていたが、ぎらり抜放って中身を検める。

「――以前見たな、これは」

「そう、父から譲られたあの兼光だ、先日拵えを変えさせたのだ」

ぴたっと納めて返す。

「ありがとう、ちょっと失礼する」

そういうと、呆気にとられている甲子雄を後目に、玄関へ出ていった兵馬、――何か安吉にいいつけてすぐに戻ってくると、座につくなり、