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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
「どうして?」
「そうなれば、あたしァ、借りたものを返さなくっちゃァならない。」
「何だ、そんなことを怖がっているのか?」
「怖がっちゃァいないさ。怖がっちゃァいないが、そうしなかったら、チョコのこったもの、どんなまた阿漕なことをいって来るか知れない。」
「いって来たっていゝじゃァねえか。――打捨っとけ、そんなこと……」
「君じゃァないよ、そうは行かないよ。」
「感心だ。――わけえものはそれでなくちゃァいけねえ。」
「おだてなくたっていゝ。」
「おだてやァしねえ。――が、それほど覚悟をきめているなら……というよりは、それほど気前がいゝならどうせ手のついた金だ。まだ残ってるだろう、すこしは。――どこかへ連れて行きねえ、二人を。――『菊の家』でいゝから連れて行きねえ。――なァ小倉……?」
「いゝだろう、それも。」ともに小倉もいった。
「戯、戯談だろう。」
田代はいそいでふところを押えた。……というのは、めずらしくその日、荒い縞の、いかにも女形らしいお召の着附に、意気な、幅のやゝ狭い紺献上の帯をかれはしめていた……
「往生際のわるい。――骨は拾ってやるよ、二人が。」そういって、すぐ、有無なく三浦は立ち上った。