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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁

青空文庫

「へえ、いえ、一寸帰りに名古屋へ寄りましたもんで……」

うッかりそういって、田代は、三浦のそばにいることにすぐ気がついた。失策ったと思った。うわさをしていたという以上、相手が三浦なら、ロクなことはいわないにきまっている……

「何しに?」

「へえ、一寸……」

「飲みにか?」

「へえ、いゝえ……」

「いゝから、まァ、飲め。――たんとずッこけろ。――若いうちはそのほうがいゝ。」

「…………」

おもわず田代は由良の顔をふり仰いだ。――いつにもそんなことをいったことのない人である、勝負事のつぎには酒のことをやかましくいう人である、飲むな、決して飲むな、いゝ役者になろうと思ったら決して飲むな、始終いまゝで、自分にむかってもそうばかりしかいわなかった人である……

「若宮が……お前の半分でも若宮が飲んだらあんなこともしなかったろう。……もっと外に思案のしようもあったろう。……そう思うんだ、俺は……」

すぐ、また、言葉を継いで由良はいった。――そういって、わざと、晴れやかに、機嫌よく由良はわらった。

三人、そッとさびしく眼を交した。

三

「たしか、しかし……」さりげなく小倉はいった。