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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
――知ってるから、だから、あたしァそういうんだ。」
「どこへでも俺たちをつれて出る。――その料簡になればいゝんだ。――うそにもそうした気になればそれでいゝんだ。」自分にうなずくように小倉はいった。
「何だぜ、あれ。……わかれたくなかったんだぜ、まだ。……ことによるとどッかへもっと連れて行くつもりだったかも知れないぜ。」
「このうえ窮命させられてたまるものか。」
吐出すように三浦はいった。
「可笑しいよ、実際可笑しいよ。」田代は急にわらって「おやじの前へ出ると、慶ちゃんでも不思議に手も足も出なくなってしまうから可笑しいよ。」
「ふざけちゃァいけねえ。」
「そうじゃァないか、ほんとじゃァないか。――まるで猫みたいに音無しくなってしまうじゃァないか?」
「何かいえばうるせえからよ。」
「そんな、また……」
「この二三年、どこへ行くにも必ず一人だった。」小倉は話をあとへもどして「よしそこに、眼のまえに誰がいたって、決して一しょに来いといわなくなった。――どうしてそうこずんでしまったか? ――あんなにぎやか好きの人がどうしてそうしゅんでしまったか? ――気にしていたんだ、俺は……」