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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁

青空文庫

――えゝ、もう、知ってることは二三年まえから。……けど、どッかの会社の重役さんというだけで、じつは、名前もよく知らないの。……外の人が、シイさん、シイさんといってるから、一しょになって、シイさん、シイさんといってるだけ……

――そんなバカなことが……

――あるから不思議よ。……うた沢をうたうんで、時おり、そのお相手を仰せつかるだけ。……声はいゝのよ。……一寸、素人ばなれがしてるのよ……

――先方でみつけたのか、君のほうから声をかけたのか?

――両方。……両方、同時に。……あたしが“まァ”と思わずいったとき、先方も“やァ”といったのよ。……一つには、大へん空いた電車で、どこもかしこもガランとしてたもんで、それですぐ分ったのよ、あたしにしても、先方にしても……聞いたら、逗子から乗っていたのよ、先方は……

――で、空いていたから、一応、仁義として、側へ行ってすわった。……“いゝお天気ですわねえ”と、まず、君のほうからいった……

――御名答……

――女のほうから口をきられて、だまってる男はない。……すくなくも、“そうだね”とか、“ほんとにね”とか、返事をしたにちがいない。