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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁
――それにはすれ違う芸妓でも箱丁でも一人として知った顔がなく、一人として天下の西巻金平を問題にするものがありません。――みんな知らん顔でそばを通って行きます。――こうまで俺も売れなくなったか? おもわず立止って溜息をついたといいます。」
「以前だったら通り切れるこっちゃァありません。」
「真逆それほどでもないでしょうか……」
「以前、いゝえ、木場の福井さんという方がおいでになりましてね。――わたくしなんぞも御贔負になりましてすが、この方が大した遊び手で、福井さんといえばどこの花柳界でもそのころ知らないものはない位。……とりわけ柳橋がお好きで始終あの土地へ行っておいでゞした。――西巻さんはその方の大のお気に入り。……お側去らずの恰好でしたから柳橋で西巻さんを知らなかったらそれこそモグリ。――それはもう大した御威勢でした。」
「と、当人のいうことでもまんざら懸値の……?」
「いゝえ、それは。――それは、もう、その時分だったら知らないものでも先方から頭を下げて来ました。」
……年の市の昨日にすぎた今日。――そうでなくっても一段落ついた感じに、このあたりどこともなくガランとうらさびしいのが当りまえのところへ、昨夜からふり出した雨がみぞれさえまじえていまだに小止みなくふっている。