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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁
彼は常に自分を兄さんと呼んでいる。
『ご勉強ですか。』
『いや、そうじゃアない、今ウォーズウォルスを読んで佐伯のことを思い出したから日記を見ていたところだ。』
『どうです散歩にお出になりませんか、今日は写生しようと思って道具を持って来ました。』
『なるほど、将几ができたね。』
『やっと買いました、大枚一円二十五銭を投じたのですがね、未だ一度しか使って見ません。』
と畳んで棒のごとくする樫の将几を開いて見せた。
『いよいよ本式になったナ』と自分は将几と小山とを見比べて言った。
『そうです、もうここまで行けば後へは退けません』と言い放ったが何となくかれの顔色はすぐれなかった、というものはそのはずだ、彼は故郷なる父母の意に反してその将来を決しているからである。画に対する彼の情は燃ゆるようで、ほとんど本気のさたかと彼の友は疑うほどである。これまで彼は父母の意に従って高等学校に入るべき準備をしていた時でも、三角に対する冷淡は画に対する熱心といつも両極をなしていた。さらにさかのぼって、彼の小学校にある時すら彼は画のみを好んでおったのを自分は知っている。この少年に向かって父母は医師たらんことを希望しているのである。