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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁
そしてがっかりして急に年を取ッた。そして希望なき零落の海から、希望なき安心の島にと漂着した。
かれの兄はこの不幸なる漂流者を心を尽くして介抱した。その子供らはこの人のよい叔父にすっかり、懐いてしまった。兄貫一の子は三人あって、お花というが十五歳で、その次が前の源造、末が勇という七歳のかあいい児である。
お花は叔父を慰め、源造は叔父さんと遊び、勇は叔父さんにあまえた。豊吉はお花が土蔵の前の石段に腰掛けて唱う唱歌をききながら茶室の窓に倚りかかって居眠り、源造に誘われて釣りに出かけて居眠りながら釣り、勇の馬になッて、のそのそと座敷をはいまわり、馬の嘶き声を所望されて、牛の鳴くまねと間違えて勇に怒られ、家じゅうを笑わせた。
かかる際にお花と源造に漢書の素読、数学英語の初歩などを授けたが源因となり、ともかく、遊んでばかりいてはかえってよくない、少年を集めて私塾のようなものでも開いたら、自分のためにも他人のためにもなるだろうとの説が人々の間に起こって、兄も無論賛成してこの事を豊吉に勧めてみた。
豊吉は同意した。そして心ひそかに歓んだ、その理由は、かれ初めより無事に日を送ることをよろこばなかった、のみならずついに何事をもなさず何をしでかすることなく一生空しく他の厄介で終わるということは彼にとって多少の苦痛であった。