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わすれえぬひとびと

武蔵野

国木田 独歩

線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁

青空文庫

』と大きな声で言うのは『踏切の八百屋』である。

『そうよ懐が寒くなると血がみんな頭へ上って、それで気が狂うんだろうよ』と言ったのは長屋の者らしい。

『うまいことをいってらア』と江藤はつぶやいた。

『おいらは毎晩逆上せる薬を四合瓶へ一本ずつ升屋から買って飲むが一向鉄道往生をやらかす気にならねエハハハハ』

『薬が足りないのだろうよ、今夜あたりお神さんにそう言って二合も増やしておもらいな。』

『違えねえ、懐が寒くならアヒヒヒヒ』と妙な声で笑った。

※(始め二重括弧、1-2-54)三※(終わり二重括弧、1-2-55)

その夜八時過ぎでもあろうか、雨はしとしと降っている、踏切の八百屋では早く店をしまい、主人は長火鉢の前で大あぐらをかいて、いつもの四合の薬をぐびりぐびり飲っている、女房はその手つきを見ている、娘のお菊はそばで針仕事をしながら時々頭を上げて店の戸の方を見る。

『なるほど四合では足りねエ。』

『何がなるほどだよ。』女房はもう不平らしい。

『逆上の薬が足りないッてことよ。』

『ばか言ってらア。』女房には何のことだかわからない。

『お菊、もう二合取って来てくんねエ。