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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

「与次郎は一刻ぐらい抜け出したと思うが――誰も気が付かなかったろうか」

平次は念のために訊ねてみました。

「引っ切りなしに飲んで食って、百万遍も称えていたんですもの、抜け出す暇なんかありゃしません。もっとも、手水ぐらいには立ったでしょうが、どんな長雪隠でも四半刻(三十分)と姿を見せなきゃ、みんな気が付きますよ」

「なるほどね」

そう言われると一言もありません。昨夜のお通夜は、家族の者を別にして、外から来たのはせいぜい十二三人、狭い家の中は、相当ゴタゴタしたにしても、与次郎のような中心人物は四半刻と人に気が付かずに、抜け出せる道理はありません。

「与次郎は何をしていたろう、亥刻から子刻(十二時)の間の事を聴きたいが――」

幸い聖堂裏の甚助殺しもここまでは知られず、平次は思いのままこんな事が訊けたのです。

「あの男は不思議に念仏嫌いでね、――百万遍が始まると、お勝手へ行ってお燗番をしたり、料理の手伝いをしたりして居ましたよ」

「有難う、とんだ邪魔をして済まなかった」

平次はなんの得るところもなく、本郷へ帰って来ました。

ちょうど玉屋へ入ろうとすると、

「親分」店の中から飛んで出たのは八五郎です。