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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「万吉! 油断いたすなよ」

「おお、こいつだ。宵から虫が知らせたなあ!」と、万吉も、内懐の十手をつかんだ。

輪をなしてきた人影が、等しくジリジリと輪をちぢめて、魔刃のそよぎを詰めよせてきた時、どこからか、

「待て」

と、鈍重な声が走った。

立ちすくみに、身を構えていた三人が、ふと眼をつけると、庭の一方大樹のかげに、雨を避けつつ見張っている自来也鞘。

いうまでもなく、天堂一角である。

一角だけは、覆面をせずに、野ばかまの高股だち。その側にいて、鯉口をつかんでいるのは森啓之助であろう。

「おう、それなる三名の者……」

傲岸な調子で吠えかけた。もう縄にかけた囚人扱いである。一角の言葉は、ピューッという風雨が横から声をさらって、ちぎれちぎれに掠れて聞こえる。

「もう駄目だ! 諦めて後ろへ手を廻してしまえ。いわずとものことだが、吾々は、蜂須賀阿波守にさし向けられてまいった者、生殺与奪の権があるぞ、ジタバタすれば弄り殺し――」

「だまれッ」

だしぬけに、俵一八郎、それを遮って、きびしく言い返した。

「阿波守が何者である、蜂須賀家じゃとて、かような狼藉を、無辜のものに加えてよいか」