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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「ふん……」というように、一角の白い歯が闇の中に剥いてみえる。
「白々しいことを申すな! 阿波の侍従重喜公、おそれ多いが名君でおわすぞ。いわれもなく、何でかようなことをするものか。その科は汝らの胸に覚えがあろう。申し開く筋があるなら、とにかく安治川のお下屋敷へきた上にいたせ」
「いや、なんと申そうが、この方どもは、さような所へ引かれてゆく覚えがない」
「阿波の御禁制を犯し、お家の内秘をのぞこうとする不敵な大罪、言いのがれはかなわぬ」
「禁制とは阿波領だけの禁制で、よも天下の大法ではござるまい。ここは天領、すなわち将軍家の御支配地、一国の太守にすぎぬ阿波守が、掟呼ばわりを召さるいわれがない」
一八郎の弁舌は、さすが同心役を勤めていただけに練れていて、理の明晰と語気の鋭さが一語一句にひらめいている。
「ましてや吾々とて、また阿波の禁界をふみ越えた覚えもなし、内秘を探ったこともござらぬ。それをしも疑心暗鬼に見らるるにおいては、なんぞ御当家には、それまでも世の耳目をおそれる秘密がおありとみえる」
痛いところを罵った。
いかにも、阿波以外の領土で、阿波の国禁を無碍にふりかざすのは暴の限りである。