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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens
「われは沛国郡(安徽省・毫県)の生れで、曹操字は孟徳、小字は阿瞞、また吉利ともいう者です。すなわち漢の相国曹参より二十四代の後胤にして、大鴻臚曹崇が嫡男なり。洛陽にあっては、官騎都尉に封ぜられ、今、朝命によって、五千余騎にて馳せ来り、幸いにも、貴軍の火攻めの計に乗じて、逃ぐる賊を討ち、賊徒の首を討つことその数を知らないほどです。――ひとつお互いに両軍声をあわせて、天下の泰平を一日もはやく地上へ呼ぶため、凱歌をあげましょう」
「結構です。では、曹操閣下が矛をあげて、両軍へ発声の指揮をしてください」
玄徳が謙遜していうと、
「いやそれは違う。こよいの勝ち軍はひとえに貴軍の謀略と働きにあるのですから、玄徳殿が音頭をとるべきです」と、曹操も譲りあう。
「では、一緒に、指揮の矛を揚げましょう」
「なるほど、それならば」
と、曹操も従って、両将は両軍のあいだに轡をならべ、そして三度、鬨の声をあわせて野をゆるがした。
野火は燃えひろがるばかりで賊徒らの住む尺地も余さなかった。賊の大軍は、ほとんど、秋風に舞う木の葉のように四散した。
「愉快ですな」
曹操は、かえりみて云った。