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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens
赤兎馬
一
こともにわかに、丁原が兵を率いて、董卓の陣を急に襲ってきた。彼は聞くや否や、大いに怒って、たちまち身を鎧い、陣頭へ出て見ていると、たしかに昨日の呂布、黄金のをいただき、百花戦袍を着、唐猊の鎧に、獅蛮の宝帯をかけ、方天戟をさげて、縦横無尽に馬上から斬りまくっている有様に――董卓は敵ながら見とれてしまい、また内心ふかく怖れおののいた。
赤兎馬
一
その日の戦いは、董卓の大敗に帰してしまった。
呂布の勇猛には、それに当る者もなかった。丁原も、十方に馬を躍らせて、董卓軍を蹴ちらし、大将董卓のすがたを乱軍の中に見かけると、
「簒逆の賊、これにありしか」と、馳け迫って、
「漢の天下、内官の弊悪にみだれ、万民みな塗炭の苦しみをうく。しかるに、汝は涼州の一刺史、国家に一寸の功もなく、ただ乱隙をうかがって、野望を遂げんとし、みだりに帝位の廃立を議するなど、身のほど知らずな逆賊というべきである。いでその素頭を刎ねて、巷に梟け、洛陽の民の祭に供せん」
と討ってかかった。
董卓は、一言もなく、敵の優勢に怖れ、自身の恥ずる心にひるんで、あわてて味方の楯の内へ逃げこんでしまった。