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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens

Aozora Bunko

二

わたくしは初めから利のあるほうへ付くと明言していたでしょう。もともと、武士でもなんでもない身ですから、きょうからは曹将軍へ味方することにきめました。どうもあちらの旗色のほうが良さそうですからな。……へへへへ」

二

呂布は牙を噛んで、

「やいっ、開けろ、城門を開けおらんか。うぬ、憎ッくい賤民め、どうするか見ておれ」

と、口を極めて罵ってみたが、どうすることもできないのみか、城壁の上の田氏は、

「もうこの城は、お前さんの物ではない。曹操様へ献上したのだ。さもしい顔をしていないで、足もとの明るいうちに、どこへでも落ちておいでなさい。――いや、なんともお気の毒なことで」

といよいよ、嘲弄を浴びせかけた。

利を嗅いで来た味方は、また利を嗅いで敵へ去る。小人を利用して獲た功は、小人に裏切られて、一挙に空しくなってしまった。呂布は、散々に罵り吠えていたが、結局、そこで立ち往生していれば、曹軍に包囲されるのを待っているようなものである。ぜひなく定陶(山東省・定陶)をさしてひとまず落ちて行った。

かくと聞いて、陳宮は、

「田氏を用いて、彼に心をゆるしていたのは、自分の過ちでもあった」