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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens
人間燈
一
董卓は、嘲りながら、濶歩して一室へかくれ、やがて盛装をこらして車に打乗り、数千の精兵に前後を護られて塢山を降って行った。
人間燈
一
蜿蜒と行列はつづいた。
幡旗に埋められて行く車蓋、白馬金鞍の親衛隊、数千兵の戟の光など、威風は道を掃い、その美しさは眼もくらむばかりだった。
すでに十里ほど進んで来ると、車の中の董卓は、ガタッと大きく揺すぶられたので、
「どうしたのだっ」と、咎めた。
「お車の輪が折れました」と、侍臣が恐懼して云った。
「なに。車の輪が折れた」
彼は、ちょっと機嫌を曇らし、
「沿道の百姓どもが、道の清掃を怠って、小石を残しておいたからだろう。見せしめのため、村長を馘れ」
彼は、傾いた車を降りて、逍遥玉面というべつな車馬へ乗りかえた。
そしてまた、六、七里も来たかと思うと、こんどは馬が暴れいなないて、轡を切った。
「李粛、李粛」と、金簾のうちから呼んで、彼は怪しみながら訊ねた。
「車の輪が折れたり、馬が轡を噛み切ったり、これは一体、どういうわけだろう」
「お気にかけることはありません。太師が、帝位に即き給うので、旧きを捨て新しきに代る吉兆です」
「なるほど。