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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Read 三国志(一) (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 309,839 characters · 622 screens
四
「悪業のむくいだ」と罵りざま、ぐざと、その喉を刺しつらぬいた。
禁廷の内外は、怒濤のような空気につつまれたが、やがて、それと知れ渡ると、
「万歳っ」
と、誰からともなく叫びだし、文武百官から厩の雑人や、衛士にいたるまで、皆万歳万歳を唱え合い、その声、そのどよめきは、小半刻ほど鳴りもやまなかった。
李粛は、走って、董卓の首を打落し、剣尖に刺して高くかかげ、呂布はかねて王允から渡されていた詔書をひらいて、高台に立ち、
「聖天子のみことのりにより、逆臣董卓を討ち終んぬ。――その余は罪なし、ことごとくゆるし給う」
と、大音で読んだ。
董卓、ことし五十四歳。
千古に記すべきその日その年、まさに漢の献帝が代の初平三年壬申、四月二十二日の真昼だった。
四
大奸を誅して、万歳の声は、禁門の内から長安の市街にまで溢れ伝わったが、なお、
「このままではすむまい」
「どうなることか」と、戦々兢々たる人心の不安は去りきれなかった。
呂布は、云った。
「今日まで、董卓のそばを離れず、常に、董卓の悪行を扶けていたのは、あの李儒という秘書だ。あれは生かしておけん」
「そうだ。誰か行って、丞相府から李儒を搦め捕って来い」