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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

二人の人足が、益満のために、川へ陥った一人を探すため、川下へ急いでいた。時々、頭が、水から出ようとしては没し、没しては出て、川下へ流されていた。

池上と、兵頭とは、磧へ上ってしまった。磧の群集が二つに分れた。役人らしいのが、二人に何か聞いて、二人を囲んで、だらだら道を登って行った。

益満は、一つの輦台が、右手へ抜けようとするのを、棒を延して押えているらしく、その輦台が止まった。

「益満め、舌の先と、早業とで、上手に押えたと見えるな」

と、八郎太が微笑した。そして

「この騒ぎにまぎれて渡ろう。何ういう不慮の事が起きんでもなし、水嵩も増すようであるし――」

小太郎は、川会所へ行った。川札は

乳下水、百十二文

と、代っていた。どんより曇った空であった。山の方には、雲が、薄黒く重なり合っていた。雨が降っているのだろう。

島田の宿は、混合っていた。風呂の湯は、真白で、ぬるぬるしていたし、女中は、無愛想な返事をして、廊下を足荒く走った。

「へん、ってんだ」

雨は降る降る

大井川はとまる

飯盛りゃ、抱きたし

銭は無し

隣りの――

と、唄って、七瀬と、綱手の部屋の隣りの旅人は、急に声を落して