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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens
浪子は幼きよりいたって人なつこく、しかも怜悧に、香炉峰の雪に簾を巻くほどならずとも、三つのころより姥に抱かれて見送る玄関にわれから帽をとって阿爺の頭に載すほどの気はききたり。伸びん伸びんとする幼心は、たとえば春の若菜のごとし。よしやひとたび雪に降られしとて、ふみにじりだにせられずば、おのずから雪融けて青々とのぶるなり。慈母に別れし浪子の哀しみは子供には似ず深かりしも、後の日だに照りたらば苦もなく育つはずなりき。束髪に結いて、そばへ寄れば香水の香の立ち迷う、目少し釣りて口大きなる今の母を初めて見し時は、さすがに少したじろぎつるも、人なつこき浪子はこの母君にだに慕い寄るべかりしに、継母はわれからさしはさむ一念にかあゆき児をば押し隔てつ。世なれぬわがまま者の、学問の誇り、邪推、嫉妬さえ手伝いて、まだ八つ九つの可愛児を心ある大人なんどのように相手にするより、こなたは取りつく島もなく、寒ささびしさは心にしみぬ。ああ愛されぬは不幸なり、愛いすることのできぬはなおさらに不幸なり。浪子は母あれども愛するを得ず、妹あれども愛するを得ず、ただ父と姥の幾と実母の姉なる伯母はあれど、何を言いても伯母はよその人、幾は召使いの身、それすら母の目常に注ぎてあれば、少しよくしても、してもらいても、互いにひいきの引き倒し、かえってため