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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens
五の四
子爵夫人は男まさりの、しかも洋風仕込みの、議論にかけては威命天下に響ける夫中将にすら負を取らねど、中将のいたるところ友を作り逢う人ごとに慕わるるに引きかえて、愛なき身には味方なく、心さびしきままにおのずからへつらい寄る人をば喜びつ。召使いの僕婢も言に訥きはいつか退けられて、世辞よきが用いられるようになれば、幼き駒子も必ずしも姉を忌むにはあらざれど、姉を譏るが継母の気に入るを覚えてより、ついには告げ口の癖をなして、姥の幾に顔しかめさせしも一度二度にはあらず。されば姉は嫁ぎての今までも、継母のためには細作をも務むるなりけり。
東側の縁の、二つ目の窓の陰に身を側めて、聞きおれば、時々腹より押し出したような父の笑い声、凛とした伯母の笑い声、かわるがわる聞こえしが、後には話し声のようやく低音になりて、「姑」「浪さん」などのとぎれとぎれに聞こゆるに、紅リボンの少女はいよよ耳傾けて聞き居たり。
五の四
「四イ百く余州を挙うぞる、十う万ン余騎の敵イ、なんぞおそれンわアれに、鎌倉ア男児ありイ」
と足拍子踏みながらやって来しさっきの水兵、目早く縁側にたたずめる紅リボンを見つけて、紅リボンがしきりに手もて口をおおいて見せ、頭を掉り手を振りて見せるも委細かまわず「姉さま姉さま」