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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens
一の三
先奥様がお亡くなり遊ばした時、ばあやに負されて、母様母様ッてお泣き遊ばしたのは、昨日のようでございますがねエ」はらはらと落涙し「お輿入の時も、ばあやはねエあなた、あの立派なごようすを先奥様がごらん遊ばしたら、どんなにおうれしかったろうと思いましてねエ」と襦袢の袖引き出して目をぬぐう。
こなたも引き入れられるるようにうつぶきつ、火鉢にかざせし左手の指環のみ燦然と照り渡る。
ややありて姥は面を上げつ。「御免遊ばせ、またこんな事を。おほほほ年が寄ると愚痴っぽくなりましてねエ。おほほほほ、お嬢――奥様もこれまではいろいろ御苦労も遊ばしましたねエ。本当によく御辛抱遊ばしましたよ。もうもうこれからはおめでたい事ばかりでございますよ、旦那様はあの通りおやさしいお方様――」
「お帰り遊ばしましてございます」
と女中の声階段の口に響きぬ。
一の三
「やあ、くたびれた、くたびれた」
足袋草鞋脱ぎすてて、出迎う二人にちょっと会釈しながら、廊下に上りて来し二十三四の洋服の男、提燈持ちし若い者を見返りて、
「いや、御苦労、御苦労。その花は、面倒だが、湯につけて置いてもらおうか」
「まあ、きれい!」