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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens
六の二
と自ら立って茶棚より菓子鉢を取り出でつ。
「まるでお客様ですな」
武男は葉巻を一吸い吸いて碧き煙を吹きつつ、うちほほえむ。
「武どん、よう帰ったもった。――実はその、ちっと相談もあるし、是非帰ってもらおうと思ってた所じゃった。まあ帰ってくれたで、いい都合ッごあした。逗子――寄って来つろの?」
逗子はしげく往来するを母のきらうはよく知れど、まさかに見え透いたるうそも言いかねて、
「はあ、ちょっと寄って来ました。――大分血色も直りかけたようです。母さんに済まないッて、ひどく心配していましたッけ」
「そうかい」
母はしげしげ武男の顔をみつめつ。
おりから小間使いの茶道具を持て来しを母は引き取り、
「松、御身はあっち行っていなさい。そ、その襖をちゃんとしめて――」
六の二
手ずから茶をくみて武男にすすめ、われも飲みて、やおら煙管をとりあげつ。母はおもむろに口を開きぬ。
「なあ武どん、わたしももう大分弱いましたよ。去年のリュウマチでがっつり弱い申した。昨日お墓まいりしたばかいで、まだ肩腰が痛んでな。年が寄ると何かと心細うなッて困いますよ――武どん、卿からだを大事にしての、病気をせん様してくれんとないませんぞ」