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しょうせつ ほととぎす

小説 不如帰 

徳冨 蘆花

Read 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) by 徳冨 蘆花 (とくとみろか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,742 characters · 256 screens

Aozora Bunko

地色の黒きにうっすり刷きて、唇をまれに漏るる歯はまばゆきまで皓くみがきぬ。パッとしたお召の単衣に黒繻子の丸帯、左右の指に宝石入りの金環価高かるべきをさしたり。

「またおとうさまに甘えているね」

「なにさ、今学校の成績を聞いてた所じゃ。――さあ、これからおとうさんのおけいこじゃ。みんな外で遊べ遊べ。あとで運動に行くぞ」

「まあ、うれしい」

「万歳!」

両児は嬉々として、互いにもつれつ、からみつ、前になりあとになりて、室を出で去りしが、やがて「万歳!」「兄さまあたしもよ」と叫ぶ声はるかに聞こえたり。

「どんなに申しても、良人はやっぱり甘くなさいますよ」

中将はほほえみつ。「何、そうでもないが、子供はかあいがッた方がいいさ」

「でもあなた、厳父慈母と俗にも申しますに、あなたがかあいがッてばかりおやンなさいますから、ほんとに逆さまになッてしまッて、わたくしは始終しかり通しで、悪まれ役はわたくし一人ですわ」

「まあそう短兵急に攻めンでもええじゃないか。どうかお手柔らかに――先生はまずそこにおかけください。はははは」

打ち笑いつつ中将は立ってテーブルの上よりふるきローヤルの第三読本を取りて、片唾をのみつつ、薩音まじりの怪しき英語を読み始めぬ。