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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
九
向柳原へ入ると、平次の足は一文字にお先棒の三次の宿へ――。
が、危機一髪というところでした。三次はもう叔母の家を飛出して、どこともなく行ってしまったのです。叔母に訊くと、三次が旅装束をして、出かけたのは半刻前、まだ芝へも行き着くまいと言うのでした。
「それッ」
飛出す八五郎。
「待て待て、旅に出た後に、あの真新しい草鞋があるのはどうしたわけだ」
平次は上がり框の下を指します。
「あッ」
蒼くなった叔母。
「八、裏口へ廻れッ。構わないから踏込んで家捜しだ」
平次の叱咤に誘われるように、二階から屋根伝いに表へ飛降りた三次、三足とも飛ばない中に、
「御用ッ」
平次の手に後ろ髪を掴まれてしまったのです。
瞬時、恐ろしい格闘が展開しました。お先棒の三次の身体の利きようは、全く非凡なものでしたが、ガラッ八と平次と力を協せて、大汗の後ようやく取って押えました。
「悪い野郎だ、神妙にせい」
「…………」
三次は一番獰猛な野獣のような歯を剥くのでした。
九
「親分、どうして茂吉が殺されると、三次に見当を付けなすったので――」
暴れ狂う三次を番屋へ送った帰りガラッ八は、親分の平次のこの捕物の絵解きをせがみました。