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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
六
お雪の話は奇っ怪ですが、そう説明されると、仇同士がお互に離れることもならず、互に疑い合い、互に憎み合い、互に見張り合って、三年越し暮した事情も呑込めないことはありません。
「福島様は幸い御裕福で、三年経ってもお困りの様子もございませんが、私どもは御覧の通りの有様、その上兄の病気で、何もかも売り尽し、恥かしながら、刀の中味まで、竹箆に代わるような浅ましいこの頃でございました」
平次は慰め兼ねました。
「ところで、岩根半蔵というのは?」
「福島様の御友人で、その頃国許を退転した方でございます」
これ以上のことはお雪も知りません。平次は、とにもかくにも、宥め励まして引揚げる外はなかったのです。
六
福島家では笹野新三郎の許しを受けて、葬いの支度に取りかかりました。
美しい娘のお頼は、あまりの事に泣いてばかりいる有様で、跡部満十郎が何もかも一人で引受けて仕事を運ぶ外はありません。
「跡部さん、忙しいところをお気の毒ですが」
「いや、一向構わないが――」
跡部満十郎は平次の望むがままに、手をあけて物蔭へ来てくれました。
「変なことを伺いますが、福島家は裕福でしょうか」