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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
「不思議なことがあるものだよ、私も福島家には三年五年食いつなぐ金があるものと思っていたが、主人が死んでみると本当に百の貯えもないことが判った」
「ヘエ――」
「費用万端、私が立換えてやっているが、こんなに驚いたことはないよ」
跡部満十郎は本当に驚いている様子です。
「旦那とここの御主人とはどんな係り合いで?」
「何でもないよ、ただ同藩だったし、稽古所で私の娘どもも、お頼殿と別懇にしていたし、それに私と福島殿とは碁敵だったからな。――性が合うと言うものか、他人のような気がしない、お頼殿さえその気なら、この後は私の家へ引取って、娘どもの姉分になって貰おうと思っているよ」
「旦那の御配偶は?」
「ないよ」
跡部満十郎の顔はちょっと翳りました。四十前後といっても、気の若そうな正直一途らしい人物です。
それから、お頼にもう一度逢いましたが、ただ泣くばかりで何の取留めもありません。もっとも、成熟し切った十九の肉体は、申分のない美しさと優しさに恵まれて、少し気性の弱々しいのさえ、かえって魅力になるといった肌合の娘でした。
それから、最後に、もう一度藤助。
「この野郎は何べん逃げ出そうとしたかわかりませんよ、――主殺しはこやつじゃありませんか、親分」