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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

引き卸させてみると、汚い風こそしておりますが、さすがに娘になる年配で、埃と垢とに塗れながらも、不思議に美しさが輝きます。

「これは一体どうなすったんだ?」

「何でもありゃしません、不断から手癖の悪い娘で、家中で持て余されておりますが、この物置に寝泊りしているんですから、昨夜だって泥棒の入ったのを知らないはずはありません。どうかしたら、この娘が手引をして引入れたんじゃあるまいかと言う者があって、一応縛り上げて窮命さしていたんで――、旦那の言い付けでございますよ」

言うことはシドロ、モドロです。

「これは奉公人かい」

「ヘエ、奉公人みたいなもので」

娘の縄目を解いて、外へ出すと、そこまで跟いて来た権助は、

「奉公人じゃねえよ親分、それはお前、お梅坊と言って、今の旦那には姪に当る方だ。この娘の兄さんは身持放埒で行方知れずさ。可哀想にお梅坊は、奉公人よりヒドい目に逢っていなさるんだ。罰の当った話だよ」

と、遠慮もなく張り上げます。

「黙っておいで、権助、お前なんかの出る幕じゃない」

「まア、そう言ったものさ、ね番頭さん」

それでも権助は、強いて抗う様子もなく、一度に溜飲を下げるとニヤリと人の好い薄笑いを残して、元の庭前へ立ち去りました。