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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
「えッ、その方どもに縛られる喜六ではない、退け退け」
サッと身を翻すと、眼にも止まらぬ早業で、早くも二三人の捕方は浅傷を負わされた様子。
「油断するなッ」
後ろから激励の声を掛けたのは笹野新三郎です。
「灯だッ」
誰やらの声に応じて、どこに隠してあったか、十幾つの御用の提灯が、一度にパッと二人の曲者を照らします。
「あっしが行きましょう、この野郎には家を焼かれた怨みがあります」
パッと飛出した美丈夫。
「平次だ、平次だ」
捕物陣は二つに割れて、その道を開きました。
「生きていたのか平次、命冥加な奴だ」
苦りする御家人喜六、右手の刃は、油断なく灯にギラリとうねります。
「手前のすることはいちいち卑怯だ、我慢のならねえ野郎だ」
そう言う口を塞ぐように、喜六の刃はサッと伸びます。
「おっと危ねえ、――これでも食やがれ」
平次の右手が挙がると、夜風を剪って銭が一枚、御家人喜六の唇へ――。
「己れッ」
わずかに刃の平で受けましたが、二枚目は強かに頬骨へ、三枚目は額へ、――眼へ――。
「野郎ッ」
ひるむ後ろから、むずとガラッ八が組付いていたのです。
「危ねえ、八」
銭形平次は驚いて飛込みました。