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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分、近頃金の要るようなことはありませんか」
押詰ったある日、銭形平次のところへノッソリとやって来たガラッ八の八五郎が、いきなり長い顎を撫でながら、こんなことを言うのです。
「何だと? 八」
平次は自分の耳を疑うような調子で、長火鉢に埋めた顔をあげました。
「へッへッ、へッへッ、そう改まって訊かれると極りが悪いが、実はね、親分、思いも寄らぬ大金が転がり込んだんで」
「大きな事を言やがる。お上の御用を承る者が、手弄みなどしちゃならねえと、あれほどやかましく言っているじゃないか」
「博奕なんかで儲けた金じゃありませんよ、とんでもない」
ガラッ八は唇を尖らせて、大きく手を振りました。
「それじゃ、富籤か、無尽か、――まさか拾ったんじゃあるまいな」
「そんな気のきかない金じゃありませんよ、全く商法で儲けたんで」
「何? 商法? 手前がかい」
「馬鹿にしちゃいけません、こう見えても算盤の方は大したもので。ね、親分、安い地所でもありませんか、少し買っておいてもいいが――」
「馬鹿野郎、二朱や一分で江戸の地所が買えると思っているのか」
「二朱や一分なら、わざわざ親分の耳には入れませんよ。