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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens

Aozora Bunko

「本当とも、俺は吉五郎が外で聞いていると知ったから、わざとお留を疑うように見せたのさ。吉五郎に白状させたかったんだ。自首するといくらか罪が軽くなる」

平次の言葉は淋しそうです。

「一番嫌なのは、丹次の野郎じゃありませんか」

とガラッ八。

「その通りだよ。娘三人の心持を滅茶滅茶にするより、いつまでも独り者の八五郎の方が立派さ」

「その気で付き合って下さい、親分」

「ハッハッ、これで、八の嫁話も当分沙汰止みか」

「有馬屋の親娘は憎いじゃありませんか」

八五郎はまだ憤々しております。

「腹を立てるなよ、吉五郎も言ったじゃないか、天道様は見通しさ」

「気の長い天道様じゃありませんか」

「まアいい、――それよりも可哀相なのはお留だ。あの晩、腹を立てて飛出した親父を心配して、稲荷様の境内へ行って又六と顔を合せたんだ」

「…………」

平次の声は濡れました。

「人殺しの娘じゃ世話の仕手もあるめえ。可哀相にあの気象じゃ苦労をするだろう」

「親分――」

「岡っ引はいやだなあ、八、せめてお留の行末でも見てやりたいが」

三月の風は、生温く二人の汗ばんだ顔を撫でます。八五郎はブルンと身を顫わせました。